熊野古道星空ガイドのブログ

「海辺の熊野古道」和歌山県みなべ町で星空ツアーを開催するStar forestのブログです。

MOA望遠鏡

こんにちは。テカポ星空ガイドの角田です。今回はMOA望遠鏡を紹介します。MOA望遠鏡はテカポにあるMt.John天文台に設置されている望遠鏡で、日本との共同研究を行っている現役の天体観測施設です。

 MOA望遠鏡基本データ

まずは見た目。こんな感じです。

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なかなか立派な望遠鏡でしょ?ちょっとわかりずらいですが、下部にある丸い部分が鏡になってまして、鏡の直径は1.8mです。このMOA望遠鏡は実はこの国NZで最大の望遠鏡です。

望遠鏡のサイズというのは鏡の大きさで決まりますので、鏡が1.8mなら高さが3mあろうと5mあろうと1.8mの望遠鏡となります。この鏡の大きさ1.8mというのがNZ最大となるわけですね。

MOA望遠鏡がMt.John天文台に設置されたのは2004年です。日本との共同研究ということで、京都にある望遠鏡の製作会社である西村製作所によって設置されました。写真見てもらうとわかりますが、赤い部分におもっきり「NISHIMURA」って書いてます。

研究はNZの国立大学であるカンタベリー大学と日本の名古屋大学大阪大学が共同で行っています。日本からもよく観測員の方が来て、大体一か月ぐらい泊まり込みで観測を行っています。

 

研究内容

このMOA望遠鏡はMOAプロジェクトというなんのひねりもない名前のプロジェクトに使われています。このプロジェクトの目的は、目には見えない暗い星や惑星を見つけ出そうというのが研究目的です。

目には見えない星を見つけるには、特別な技術が必要です。何せ目には見えないので、どれだけ大きな望遠鏡で覗いてもその姿を捉えることはできません。じゃーどうやってみつけるの?という話なんですが、「重力マイクロレンズ現象」という原理を使います。

この重力マイクロレンズの説明をちゃんとするには、黒板が必要になってきますので、このブログではサクッと説明しておきます。要は、明るい星の光(明るさ)をずーっと測ってると、そのうち暗い星(目には見えない星)の影響を受けてその明るさが変化するという原理です。

このMOA望遠鏡の研究対象は天の川の中心部分、バルジと呼ばれる場所です。このバルジには明るい星が密集していますので、MOA望遠鏡は一晩中このバルジを追いかけながら観測を行います。晴れている日だと、一晩に大体5000万個の星の光を測定し、その明るさに変化がないか朝まで探し続けます。

ちなみに、このバルジというのはちょうどさそり座といて座の間ぐらいにあります。テカポでは冬の時期にこの二つの星座があがってきます。冬は夜の時間が長く、観測時間は14時間になる日もあります。テカポ冬の星空は下記の記事で↓

blog.natsukikakuda.xn--tckwe

 

天体観測とは

皆さん、天体観測ってどんなイメージですか?天文学者が一晩中望遠鏡を覗いているようなイメージをお持ちの方も多いと思いますが、今のこの時代はそうじゃありません。

上の写真を見てもらうとわかりますが、このMOA望遠鏡にはカメラが付いています。上部の黒くて丸い筒がカメラです。観測中は下部にある鏡で反射した星の光をカメラに集めて、この大きなカメラでパシャっと撮影しています。

その間。観測員は何をしているかというと、隣の管理室で撮影されるデータを見ています。MOA望遠鏡の管理室はこんな感じです。

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MOA望遠鏡で星の写真を撮る時には、普段我々が写真を撮っているようにパシャっと撮っただけでは星の光が十分集まらないので、パシャーーーーーっとシャッターを1分間開けっ放しにします。1枚写真を撮るのに1分かかるんですね。

撮れる写真はこんな感じです↓

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ちょっと見にくいですが、白い点がすべて星です。観測員の方はこの星の明るさを管理室で測定しながら、ずーっと朝まで観測を続けます。

MOAプロジェクトはチリに共同研究の天文台があります。NZが朝になると、地球の反対側・チリでは夜が始めるので、そちらの天文台にバトンタッチするような形で、24時間、地球のどこかからは研究対象のバルジを観測できるようにしています。

 

実は私も・・・

今までいくつも新発見の惑星を見つけ出しているこのMOA望遠鏡ですが、実は私はこの望遠鏡の観測員としてもMt.John天文台で働いています

今まで惑星候補は4つ発見しました。名前はもちろん惑星ナツキ、にしたいところなんですが実際は「MOA-2014-BLG-270Lb」となります。

何じゃこりゃ?という名前ですが、基本的にMOA望遠鏡で発見される惑星はMOAプロジェクトとして発見される惑星なので、上記のようなプロジェクトの名前がつきます。

まぁ私は自分の名前で呼んでますけどね!正式名称は関係ないです。

長々と望遠鏡の案内をしてきましたが、実際星空ツアー中はこの望遠鏡は観測を行っていますので、ツアー中にお見せすることは基本的にはできません。

ただ、ツアー中に曇ってきた場合など、研究を見合わせている時には特別にご案内できる日もありますので、「どうしてもこの望遠鏡が見てみたい!」という方は曇りの日を狙ってテカポに来てみるのもいいかもしれません。